句集 『楽想』  (花神社 1996年9月20日発行)

 
B6判 ハードカヴァー 200P
                    税込み2000円

      22歳〜35歳の雑誌掲載句より選句した作品集

  著者 竹浪 明

  デザイナー 荒川じんぺい

蝶逃げる  まばゆき息を散らしつつ
いなづまのゆらめきて我が指濡らす
極寒の 食われる星と 喰らう星
春の雲 水の輪廻に倦みて浮く
菜の花の満つる地獄に 一人酔う
あたたかや 御膝にしなう
イ
エ
ス
の
屍
し
死す刻の昼夜を知らず 合  歓  の  花
まぼろしとなるまで燃ゆる曼儒沙華
タクシーに拾われ      寒き夜の街
謝肉祭 仮面ずらして口づけり
雛の顔  恋の刃を懐に
夜のシャワー朝のシャワーの後 去れり
雪の音の芯に至りて   杉   倒   る
見送りも朧の月も       なき船出
凍滝を 妃としたり   白鳥城
いてたき
永き日を 食するのみに口使い
清流の濁流に入る 青葉山
い
冬桜  寺なき山に仏棲む
め
天上を追われしごとく 雪奔る
はし
神将の怒髪に凍つる  蜘 蛛 の 糸
春星に往く    パスポートなきひとり
五重塔 五層に雪の翳重ね
身籠りて  心臓双つ 青胡桃
手をつなぎ小春をふたりの手の中に
白旗の群れに砂漠の  冬  ざ  る  る
緋牡丹の  前世は何を殺めしか
どちらかが破る約束 フリージア
木枯しを凩が     咬む繁華街
こがらし
君といて 我だけに見ゆ秋の虹
婚約を延ばして揺れる 冬銀河
壁砕き  西へ 東へ   息白く
堅香子の花揺れし頃  師 は 逝 け り
春愁の 犀が居坐るワンルーム
前世も蛇でありしか 身を捩る
恋なくば春惜しむべきこともなし
囀りに   恋の嘆きの混じらずや
さえず
滝となるまでの川面に 山映えて
農耕も狩猟も      知らず冬籠
 阿弥陀堂 山の眠りの 奥 深 く
花に逢いに行くため蝶は殻破る
花冷えというを恨めり 母 病 め ば
小鳥着く   浄土の池の薄氷
過去に貸し 明日に借りある夏窶れ
火と水と光の支払い      二月尽く
沈黙に尾行らる     坂の片陰り
つ け
かく かく

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彗星の去りし夏野に 銀の露
赫赫と初日湧き出すガンジス河
 年の夜の 撞かずの鐘の 声  無  量
つ

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 地  中  海 空に溺れしごと泳ぐ
白鳥城 待つは雪崩か翔つ刻か
た
とき
雪兎 少女の夢に跳ね疲れ
雷光と泥流取り巻く      地下聖堂
砂漠より生れて     砂漠に冬日落つ
あ

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壁一枚焚火一つに 大家族

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愁い立つ阿修羅の枯れし三十指

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君の瞳に 降る雪汚れずして消ゆる
冬霧の暮れて    ミサの灯誘える
いざな
雪の夜 仁王の肉の翳深む
しし
二人して 水の密室 夜のプール
出会いより別れは不意に  夜 の ダ リ ア
冬青空  独りに隠れ処なし

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質朴な男を選び       雪女
燦然と春陽覆う      白孔雀
噴水の虚ろな喝采       冬の空
ゴシックの尖塔に触れ         雲凍つる
戦みな地球の内戦       星冴ゆる
ヴィーナスの纏う金髪         春の靄
風音のして風の来ず          青葦原
湖よりの風のぼりつめ芒波
うみ
火の舌と水の身持ちて         蛇うねる

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寒燈下 屋根裏部屋に旅の地図
厳戒の非武装地帯に       青田富む

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